企みハジマル

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「望郷」湊かなえ 面白さの検証(読書感想ログ)

湊かなえさんの「望郷」を読み、自分なりに面白さを分析してみると、

ちびまる子ちゃん」的な視点で、人生の「深イイ話」にフォーカスを当てた、

「バックトゥザフューチャー型・ミステリー」小説と言える。

 

まずは、望郷について概要に触れてみたい。

 

「望郷」とは

 「望郷」は架空の島・白綱島を舞台にした、短編集。

湊かなえさんの故郷でもある、瀬戸内海の島がモチーフ。

6つの短編からなり、6人の主人公の現在の人生と、

幼いときに過ごした故郷での想い出を重ね合わせた中で、ストーリーが進行。

当時の謎が時間を超えて、解決していくミステリー小説。

 

それぞれのストーリーが読みやすくサクサク読めるため、

移動時間や隙間時間に読むには最適な一冊。湊かなえさんの本を初めて読みましたが、

非常に読みやすく、長編にも挑戦したい。 

望郷 (文春文庫)

望郷 (文春文庫)

 

 「望郷」の面白さの検証

 望郷は、「ちびまる子ちゃん」的な視点で、人生の「深イイ話」にフォーカスを当てた、「バックトゥザフューチャー型・ミステリー」小説と言える。

その理由を深堀していきたい。


①望郷の「ちびまる子ちゃん」的な視点とは

 「望郷」の6つの短編に共通しているのは、

「白綱島」で幼いときに過ごした記憶である。

 

幼いときの日常の記憶の一つ一つを大切に切り取っている。

 

「夢の国」では、東京のテーマパークに憧れる小学校の記憶を、

「石の十字架」では、山を探検する友だちとの記憶をフックに物語が作られている。

 

これは「ちびまる子ちゃん」と同様に、

子供の頃の「記憶」のストーリー化を行う発想であり、

古き良き子供時代に、読者を疑似回想させているのである。

 

私のような凡人が忘れてしまっている、

子供時代の小さな記憶を気づきとして物語を構築しているため、

何か懐かしい物語を読んでいる気持ちになり、”あるある”の気持ちを彷彿させる。

ちびまる子ちゃん」的発想のミステリー小説なのである。

 

②人生の「深イイ話」を解明する「バックトゥザフューチャー型・ミステリー」小説

 各短編集は全て、今の「人生」を作り上げている、

子供時代のターニングポイントへの「深イイ話」を解明する構成となっている。

 

「海の星」では、おじさんの新しい一面が見える「深イイ話」であり、

「石の十字架」では、現在に繋がる友人との「深イイ話」なのである。

 

全てのミステリーの解明が「深イイ話」となっているため、

読後にスッキリとして、嫌な気持ちにならないのである。

 

そして、この物語の中の作り方が、

その子供のときの「記憶」と今の「人生」が行き来しており、

「バックトゥザフューチャー型」ミステリー小説なのである。

新しく島と本土に作られた「橋」が、記憶の「デロリアン」とも言えるのである。 

 

大人になった「今の人生」から、

ターニングポイントである「深イイ話」を解明する、

「バックトゥザフューチャー型・ミステリー」小説を読んでみてはどうでしょうか。

 

※面白さのキーファクター

「子供の頃の記憶=”あるある”」

深イイ話=”心が暖まる系”」

「バックトゥザフューチャー型=”見たことがあるモチーフ”」 

 

望郷 (文春文庫)

望郷 (文春文庫)